新潮「波」12月号に角幡唯介さんの最新刊『地図なき山――日高山脈49日漂泊行』の書評を書かせていただきました。

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いや実は、この仕事、一度断ったというか、編集部に確認した。「本当に私でいいんですか?」

“角幡唯介”といえば高名な探検家だ。北極圏を歩いたり、チベットの未踏の谷間に挑んだりそんな人の新刊の書評に相応しい人はもっといる。服部文祥さんとか、荻田泰永さんとか……。あ、もしかして勘違いしているのだろうか?

一丁前に「山と渓谷」とかに登場して、めちゃくちゃ登ってる感を出してしまったから。純文山岳小説と銘打った、芥川賞受賞作『バリ山行』を書いた松永は、アマチュアながらも、相当な登山家だと。

違う。私はちょろちょろっと自宅近くの六甲山を彷徨っていたに過ぎない。それも5年くらい前から。つまり素人だ。

ええんか? ええのんか? と「波」の編集部さまに確認したが、素人目線でかめへんと言う。ほんなら、全編、「すげー、すげー、すげー」で終わっても知らんで、ほんまに。と思いながらゲラを送っていただいた。いや、内心はすごく、すごく読みたかった。この地図なし登山、しかも人里離れた羆がうろつく日高山脈。狂気の沙汰の山行記。めちゃめちゃオモロそうだ……。

いやほんと、素晴らしかった。奇しくも、『バリ山行』の覚醒後の波多とかなり近い感慨を書かれてある箇所があった。もちろん角幡さんのそれはもっと、もっと、何重も深淵なところからのものだけれども、私とてもその上澄を少しばかり感じられていたのかと思い、嬉しかった。

と言うことで『波』は、な、なんと、100円で買えるのだ。 そして、『地図なき山――日高山脈49日漂泊行』を買って読んでください。

書評、webで読めます!

https://www.shinchosha.co.jp/book/350232/#b_review_item_202412_03

松永K三蔵