小説TRIPPER 2021秋号 文芸季評で「カメオ」を取り上げて頂きました。

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季刊文芸誌 小説トリッパー 中村真理子さんの文芸季評 「絶望の衝撃と希望のケア」で、拙作「カメオ」が取り上げられた。ありがとうございます。

眩しい。いい表紙。

一部引用。

“可能性を強く感じた異色作”

“カメオォォー!と叫びたくなる”

例のごとく良いところだけ紹介。

異色作。

確かに「カメオ」は純文の作品としては異色かも知れない。少なくとも純文の新人賞向きじゃないだろうと思っていた。これは勝手に誇張された幻影なのかも知れないけれど、応募者にとって新人賞とは“面妖”なもので、そこには実験性が求められたり、過剰さ、新奇さを期待されているんじゃなかろうかといろいろ推測してしまうわけだ。それは主題であったり文体の試みであったり。

それからすると、「カメオ」はひどく“普通”なのだ。平凡。ただの物語。それは却って異色なのかも知れない。それだけに私の中では「カメオ」で賞を頂いたことは意味深い。純文学って何? そんな問いには、最もシンプルで平易な言葉で答えたい。グッとくるもの。だから、おもしろくてグッとくる。なんだかどこかで聞いたようなキャッチコピーだが、私はそんな「物語」を書いていきたい。

あと、“叫びたくなる”

ありがたい。グッときたら叫びたくなるよな。私もだ。書きながら何度も叫けんだ。大学の文学部の友人は、娘たちとお風呂の中で叫んでくれたらしい「カメオォォー!」

「カメオ」が読めるお店 7CAFE(ナナカフェ)幡ヶ谷

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バックナンバー取り寄せや、図書館に行かなくても「カメオ」(群像7月号掲載)が読める。しかも、スペシャリティコーヒーやスコーンなどをお供に。今回はそんなお店の紹介。

幡ヶ谷駅から歩いて30秒の好立地

7CAFE

http://7cafe.jp/

東京都渋谷区幡ヶ谷2-13-1平沼ビル1F
*京王新線幡ヶ谷駅北口から徒歩30秒
◉OPEN 11:30〜
◉平日CLOSE(日〜木) 22:30(21:30L.O.)
◉週末CLOSE(金土) 23:15(22:30L.O.)
◉定休日 火曜日

マスターは古くからの友人で、昔はよく私の果てしない文学談義に付き合ってくれた。

お店には、コアなチョイスの本が並ぶ。本好きにはたまらない。見てるだけでも絶対愉しい。

壁には太宰の「走れメロス」が貼り付けてある。これはバエる。

でもって、そんなマスターに私はデビュー前、いくつか作品を読んで貰って、いろいろアドバイスや感想をもらっていたのだ。

群像新人文学賞のことを伝えると、お祝いを頂いたので、私としては当たり前に「カメオ」も店に置いてくれるものだと思っていた。が、「チェックしてからね」と、マスター審査に合格してからと言うのだ!(厳しい!)

で、(なんとか)無事にマスター審査に合格し、この度「カメオ」が載った「群像7月号」をお店の本棚に並べてもらえることになった。

初めてPOPを作った。ラミして送る予定。

「カメオ」未読の方は是非、7CAFEでどうぞ。

早い人なら一回で読めなくもないが、「琹キープ」なんて粋なサービスもある。気になる本ばかりなので、他の本にも手を出して、琹キープで行きつけににするのもアリ。

かなり落ち着ける。読書にも最適なお店だ。

居心地最高だ。
名物 ババンヌ。 お茶はもちろん、お食事も。

あ、因みに、審査の一件でもわかるようにマスターはそんなに甘くないので、いつまでも「群像7月号」が並んでるとは限らない。急げ、急ぐのだ。

図書新聞 第3504号 7/17の文芸時評(第77回)に取り上げて頂きました。

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「カメオ」を文芸時評で取り上げて頂きました。実はちゃんと発売日(7/9)に買っていたんだが、ちょっと忘れていた‥‥‥。

コンビニのコピー機でプリント購入できます。

幼い頃、実家の近所に鉄道好きのお兄ちゃんがいた。当時は「鉄ちゃん」なんて言葉もなかったが、お兄ちゃんは紛れもなく「鉄ちゃん」だった。私もそのお兄ちゃんの薫陶を受け、Nゲージなる精巧な鉄道模型に手を出したこともあった。

ある時、お兄ちゃんが、それは珍しいヨーロッパの列車が、JR神戸線を西から東に走るので、一緒に観に行こうと声を掛けてくれた。日が暮れかかる頃、私はお兄ちゃんについて自転車に跨り、夙川沿いの道を下って、川と線路が交叉する線路際のフェンスの外に待機した。インターネットなどない当時、どうやってそんな情報を得たのだろうか。やはりそこには数人の「鉄ちゃん」がカメラを構え、待機しているのだった。

やがて日が落ちてあたりが暗くなると、あッ! という誰かの声を合図にフラッシュが焚かれ、闇の中に轟音を響かせて、黄金のモールを配した殆ど黒に近いモスグリーンの車体が眼前を走り去った。それは一瞬のことだった。

一体なんの話をしているんだ、お前は。つまり図書新聞の文芸時評で拙作「カメオ」を取り上げて頂いたが、それはまさに、読んでいて、瞬きするような一瞬。閃光が走るように僅かだったのだ。

いや、しかし、ありがたい。あの日と一緒だ。異国の意匠を凝らされた典雅な車体は、あの日、多くの「鉄ちゃん」とともに、三蔵少年の瞳にも煌びやかに映ったのだ。未だ忘れえぬ鮮烈な印象を残して。

カメオ評は僅かであったが、限られた紙面である。「ユーモアを貫徹させた」と評して頂いた。そうして「カメオ」もまた、私の前から駆け抜けて行くのだった。

『文學界』8月号の新人小説月評に「カメオ」を取り上げて頂きました。

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画像はAmazonさんから

例によって著作権とかあるから全文は載せられないので、皆さん買ってください。誠に不本意ながら一部分だけ抜粋します。(良いとこ取りします)

“通り雨、交わす言葉、犬を抱えて駆け上がる階段の足音まで聞こえてきそうな聴覚効果が目と耳に楽しく、犬も人も覗き穴も草原も、描写されるものの輪郭が鮮やかに盛り上がる。楽しい”(鳥澤氏)

“カメオという名前の犬がなんかよくわかんないけどデカくなっていくところの妙〜なキモさは秀逸”(綾門氏)

別に意味は無かったんだけど、はじめて「高見順」に気づいて貰えて嬉しかったです。鳥澤さん。※あれは石川淳と混ぜたんです。

005 感想と批評(群像7月号まとめ御礼)

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Amazonで来月8月号、各文芸誌の情報が出始めた。そろそろ次月号にバトンを渡す頃合いだろう。ということで、このあたりでまとめ。

デビュー作掲載にあたっては担当編集者、編集部、校閲部、たぶん他にもいろいろあるんだろうけど、まず改めて御礼を述べたい。本当にありがとうございました。

掲載するまでの中で感じたのは、チーム。例えば私がピッチャーをさせて頂いて、皆さんが守備。担当編集者はキャッチーかな? (私が投げた甘い球がカコーンと打たれたようなミスも、校閲の方がしっかりと捕球してくれて、ドンマイなんて親指を立てているの様子がゲラを通してみえた)或いは私がボクサーで皆さんはセコンド。F1のピットイン。そんな手厚さも感じた。

そんなサポートの中から作品の扉絵が出て、あれほど素晴らしく作品を引き立ててくれる扉絵を私は見たことがなかった。事実、あれに何人かの方は反応されており、実際にちょっと読んでみようとなった筈だ。

「カメオ」掲載の群像7月号が発売されてから一ヶ月弱。周辺や、SNSやネットなど数多くの感想を頂いた。感謝、大感謝。

三蔵エゴサーチ之図

まずは「面白い」と言って頂けるのは、嬉しいと言うよりは、ホッとする。貴重な時間を割いて読んで頂くのだから、とにかく純文もオモロくなければ、なんてことを私は思う。

感想というのはありがたいし、そしてまた読んでいてとても愉しい。

改めて思うのは、批評(感想も含め)はやはりクリエイティブなものだということ。そこには読む人の個性がすごく出る。感想を比較すると、その人の人となりが見えるようだ。

文学は文章芸術でなく、想像芸術なので、その実体が顕れ、完成するのは、紙の上でなく、読み手の頭ン中。そしてそれは無限に広がる世界だ。

著者の意図を超え、考察の底を破って更に掘り、鉱脈を探りあてる。言葉の中にシグナルを光らせて繋ぎ、新たな座標を元に地図を、あるいは星座を描いて、その物語までも–−。そんな解釈や批評を読んでいて、参りましたー、なんて思うこともしばしば。

「カメオ」に、他者との距離感に注目する人や、移っていく名前を「憑依」と見て怖さを発見する人。胸くそ悪さ。自分勝手な要求のムカつきを感じる人。不条理。人間のエゴ。愛おしさ。繋がり。疾走感。人間の地図の外。言葉と言葉の間隙。カタルシス‥‥‥。

読んで頂いた方の見た、オリジナルの世界。その拡がりの豊かさに感動した。ほんとありがたい。

それから文芸時評。

6/30の読売新聞の朝刊「文芸月評」に取り上げて頂いた。

新聞記事だけど、やっぱり著作権の関係があるようで、載せられないのが残念。転載の利用申請ってのがあったが、これがメンドイ。メンドイし何かお金がかかりそうなので諦めた。すまん。

くっそー、何とか雰囲気だけでもみんなに伝えられへんやろか、と身をふるわせて呻吟しておったら、ちょうど良い感じのが撮れたので載せておく。

「和解」というキーワード。また「クライマックスのすがすがしさに、不器用に生きる人間を肯定したくなった」という締めくくりで、ありがたい評だった。

因みにラストに関しては私に聞こえてくる範囲では肯定的なのだが……。

それから、同じ群像新人賞出身の文芸批評家、荒木優太さんの「文学+web版の文芸時評6月」にも取り上げて頂いた。これは無料で読める。

実はこの批評には、少し訂正というか、注釈をTwitterでさせてもらった。犬は肉を残して逃げた、ってことになっていたが、いや完食したのだ、と。

犬は肉を残したか、残してないか問題。(どっちでもええわ! という声が聞こえてきそうだが)指摘の箇所を再読したが、やはりそう読ませる記述もないなと。ん? あ、いや、しかしポケットの中にはサイコロ肉がひとつ残っていた。(それか!)

しかし私がそれをTwitterで注釈すると、荒木さんはすぐに記憶違いだったと発信下さった。

しかし、やはりそれは読みの範疇だろう。これは私が妙に物分かり良すぎるというわけじゃなく、これもまた批評の妙だと思う。

右と書いて左と読まれたら誤読だけれど、この場合はそうじゃない。いや、確かにいるのだ。モデルとなったウチの飼い犬は、飼い主に似てとても弁えた犬なので、あまりそういうことはないが、犬によっては、ペットフェンスを押し倒し、ポケットの中のエサに跳びかかる乱暴なヤツもいるのだ。ほんとに。改めて批評によって、犬の幅が広がったわけだ。これもまた批評の面白いところ。

「在野研究者」を掲げている荒木さんには以前から興味があった。なぜなら小説家(を目指している人も含め)のほとんどが「在野」だということ。みんなたいてい生存する為に何かしら文筆以外のワークをして、残った時間で書いている。

下着まで汗にまみれたり、機械油に手を汚し、ブルーライトを浴び、車で走り回ったり、罵詈雑言を浴び、或いは逆に浴びせる立場だったり。ま、とにかくいろいろやって、そんでもって書いてるわけだ。

今は建築関係の仕事をしている私も、だいたい塗料やシーリングに汚れた作業着で、毎朝仕事前にコーヒーショップで書いている。以前も今もそれは変わらない。在野。

昨日今日出てきたド新人で、ちょっと雑誌に作品が載っただけの微妙な存在の私は、そりゃもちろんそうなんだが。–−−なんか話がズレて来た。ま、日記だから良いだろう。

あ、最後に。そんな吹けば飛ぶようなド新人の私への、荒木さんの返信はとても丁寧なものだった。

感想をTwitterなどでお寄せ下さった皆様、本当にありがとうございました。「カメオ」掲載の群像7月号は、書棚を8月号に譲りますが、また今後、「カメオ」を読んでTwitterなどで感想頂けたらとても嬉しいです。「おい、松永、つまんねーぞ」でも、もちろんOKです(^_^)

また次作も読んでいただければ嬉しいです。ありがとうございました。m(_ _)m

(2021.0710追記)ダミアンさんがnoteで『カメオ』について書いてくれました。嬉泣。

004 タイトル詐欺(カメオ)

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「19世紀後期、イタリアで作られたというそれは、幾度も欧州の騒乱や戦禍をくぐり抜け、そしてサルドニア貝を削り出した乳白色の貴婦人の横顔は、東京を焼いたあの炎も赤々と映し出したのかも知れない。祖母から母、そしてわたしへと受け継がれてきたカメオ。けれど、今、わたしはそれを手放そうとしている––––」    (『cameo』本文より)

cameoってこんな感じか?

‥‥‥

なんて話じゃなくて、スマンな。残念、「亀夫」でした。

『カメオ』の「カメオ」は鼻毛とか出てる系の関西のオッサンの名前です。

もちろん記事の冒頭の文章は冗談だけど、    「カメオ」ってブローチとかの装飾品のことかと思ったわ! なんて感想を頂くことが私のまわりやTwitterでもいくつかあって、皆さんお洒落ですねぇ、なんて思いながら、勝手にお応えして書いた‥‥‥。

そもそも私は書いている時、カメオブローチんて名称も知らなかった。––––無知ですいません。あと、映画とかでカメオ出演てのもあるんですね。

Twitter等でいろいろご感想を頂いております。みなさん、本当にありがとうございます。今回は頂いた感想のアンサー記事でした。